【技能実習制度における建前上の「残業」の考え】

【技能実習制度における建前上の「残業」の考え】

(技能実習・特定技能)

働き方改革における企業の取り組みとして、「残業ゼロ」を目指すことは当たり前の時代となりました。50代、60代、70代…我々世代の若かりし頃は残業することは当たり前、むしろ「エライ」とされる風潮、「サービス残業」を訴えてもまかり通るような雰囲気もありませんでした。

少子高齢化が深刻となり、求人媒体で募集をしても電話すら鳴り響かない昨今の人手不足。待遇改善をしても、生産性が上がり、売上も伸ばせなければ経営は悪化するばかり。結局は今いる従業員が「残業」でカバーをして、1日1日を乗り切ることに専念するしかない企業もあるのでしょう。

仕事が終わらないから残業をする。これが一般的な考え方なのですが、技能実習生を扱う企業においては、終わらないことが前提に、また残業することを前提に収入換算し、技能実習生の募集条件に盛り込む危険な企業が多く存在します。

残業は水物…そのように事前説明をしても、技能実習生は自己都合でしか解釈しません。残業時間の上限の可能性を説明すれば、常に上限であることを前提に収入計算します。少しでも残業が少なければ大騒ぎ、約束された?残業時間であっても為替レートが悪ければ大騒ぎ、同僚の技能実習生と1時間でも差がつけば大騒ぎと、事前説明と話が違うと、現場の監理団体、受入企業では振り回される日々が続きます。

能力差、個人差もあるのに…優良な人材に対し、好待遇にしたくても、そうでもない人材を見捨てるわけにもいかず苦肉の同一賃金。失踪、途中帰国をさせるわけにもいかず、「できない」人材も上手に扱わなければいけない現実…解雇が許可されない制度、何とか3年間は継続させてあげたいという思いで取り扱っても、「転職」の権利が無いと、世間からは「奴隷制度」と揶揄されます。

よって優良であっても、そうでなくても賃金が変わらないのであれば、特別手当も無いのに、多少語学力があると判断され、日本側都合で「リーダー」など任命されるのは真っ平ごめんなのです。

さて、日本側は良かれと思って与える「残業」。技能実習機構も本音は理解をしております。ただし「建前」においては、「労働時間」と呼ばず、「実習時間」と呼ぶ「実習実施計画」というものを提出しなければなりません。

その予定した時間、残業が発生しない時間内において、経歴5年以上ある「指導員」が技能・技術・知識を習得させねばならず、仮に「残業」が発生するならば、指導力不足か、計画時間内では指導が終わらなかったのか?という建前での尋問が始まります。

いまだに「残業」は当たり前と思う経営者もいるかもしれませんが、日本人のみが在籍する企業では社内、労働基準監督署との問題で済みますが、技能実習生を活用するということは、技能実習機構の目に留まり、法務省⇔厚生労働省との双方向通報システムも発動することを理解して、残業を実施させて下さい。

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